自啓録/ある海軍兵学校生徒の青春

戦時下の海軍兵学校に75期生として入学した父が、敗戦とともに卒業するまでの日々を綴った「自啓録」とよばれる日記をもとに、一海軍兵学校生徒の青春をふりかえります。

(5) 昭和18年12月5日

「大いなる気持ちをもて。小さい事に心を動かすな」

と起床動作で三号生徒(※最下級生)がどなられて二号生徒(※最下級生の一学年上)のおっしゃったことが了解できかけた。

 

そして一号生徒(※最上級生)がどなることも暫くして了解できかけた。

 

そうなのだ、如何なる難関も突破して一日も早く大君(※おおきみ;天皇の尊称)の御為にことごとくを得る帝国海軍軍人にならなければ。

 

一号生徒の気持ちもただこれなのだろう。

 

我ながら悟りが遅いながらも、このように考えたとき既に我が心は盤石のものになったのだ。

 

 

(注)原文を一部現代語訳に、旧字体新字体に直して掲載しています。また意味のわかりにくい言葉はカッコ書き※で注釈をつけ、原本にて判別のつかない文字は ● として表記しています。